漆と社会をつなぐ
漆は、日本の暮らしや文化の中で長く受け継がれてきた天然素材です。
器や工芸品だけでなく、建築や文化財の保存・修復にも欠かすことのできない素材であり、その背景には、ウルシの木を育てる人、漆を掻く人、道具や材料をつくる人、漆を使う職人など、多くの人々の営みがあります。
しかし現在、国内で使われる漆の多くを海外からの輸入に頼り、国産漆の生産基盤や、それを支える人・技術の継承には多くの課題があります。
一方で、自然の中で育つウルシから採取される漆には、伝統文化を支えるだけでなく、自然由来の素材としてこれからの社会に活かす新たな可能性があります。
ウルシネクストは、地域、生産者、職人、研究者、大学、企業、行政、教育機関など、さまざまな人や組織と協働しながら、「漆と社会をつなぐ」活動に取り組んでいます。
私たちが目指すこと
漆と社会がつながり、その価値が未来へ受け継がれていく社会
国産漆を未来へ残すために必要なのは、ウルシの木を植えることだけではありません。
木を育て、漆を採り、それを使う技術を受け継ぐ。漆文化を支える道具や材料を守り、漆が社会の中で必要とされ、使われ続ける環境をつくる。
そして、漆に関わる人や地域、企業、研究・教育機関など、それぞれが持つ力を結び、新しい関係を生み出していく。
ウルシネクストは、漆を取り巻くさまざまなつながりを育みながら、その価値が未来へ受け継がれていく社会を目指しています。
なぜ、いま漆なのか
日本文化を支えてきた漆
日本では縄文時代から漆が使われてきました。
器や工芸品、建築、仏像、美術工芸品などに使われ、現在も国宝や重要文化財の保存・修復に欠かすことのできない素材です。
その文化は、ウルシを育てる人、漆を採る人、漆を使う職人、道具や材料をつくる人など、多くの人と技術によって支えられています。
国産漆の生産基盤を未来へ
ウルシは、苗木を植えてから漆を採取できるようになるまで長い年月を必要とします。その間にも草刈り、施肥、獣害対策などの継続的な管理が欠かせません。
さらに、生産者や漆掻き職人の育成、漆を使う産業や文化まで含めて考えなければ、持続可能な生産基盤にはなりません。
私たちは、単にウルシを植えるのではなく、地域とともに育て、採り、使われるところまでを見据えた環境づくりに取り組んでいます。
伝統から、これからの社会へ
漆は、優れた接着性や耐久性を持つ自然由来の素材でもあります。
研究者、大学、企業など異なる分野と出会うことで、伝統工芸にとどまらない新しい用途や価値が生まれる可能性があります。
伝統を受け継ぎながら、漆の価値を現代の社会に活かすことも、私たちの大切なテーマです。
ウルシネクストが取り組む4つの活動
育てる
地域とともに、国産漆の未来を育てる
地域の皆さん、生産者、専門家などと協力しながら、各地でウルシの植樹と育成に取り組んでいます。
苗木を植えるだけではなく、草刈り、施肥、土壌管理、獣害対策、補植などを続け、成長したウルシから漆を採取するところまでを見据えています。
福島県飯舘村、会津若松市、神奈川県秦野市など、それぞれの地域や環境に合わせた活動を続けています。
一本の木を植えることから、その土地に国産漆の未来を育てることへ。
活かす
伝統素材から、未来の素材へ
漆を伝統工芸の世界だけにとどめず、現代の暮らしや社会の中で活かす新しい可能性を探っています。
大学、研究者、企業、デザイナーなど異なる分野の人々と協働し、新しい素材や製品、用途の研究・開発を支援しています。
宮城大学との取り組みから生まれた「乾漆カード」は、試作から技術開発、製造方法の特許取得へと進み、実際に認定証として使用されるまでになりました。
長い歴史を持つ素材に、新しい役割を。
支える
漆文化を支える人と技術を未来へ
漆文化は、ウルシを育てる人、漆を採る人、職人、道具や材料をつくる人など、多くの人と技術によって成り立っています。
その中には、担い手が少なくなり、継承が難しくなっている技術や材料もあります。
ウルシネクストでは、企業や団体などから寄せられた支援を漆文化や伝統技術の継承へつなげるほか、職人、産地、教育・研究機関などへの支援に取り組んでいます。
漆だけでなく、漆文化を成り立たせている環境そのものを支える。
伝える
知ることから、未来につなげる
漆を未来へつないでいくためには、まず漆を知ってもらうことが大切です。
ウルシの木からどのように漆が採られるのか。どのような人や技術によって漆文化が支えられているのか。そして、漆がどのような課題と可能性を持っているのか。
講演、セミナー、ワークショップ、寄稿、学校・教育機関との活動などを通じて、漆について知る機会をつくっています。
子どもたちの学習や映像制作、国内外の研究者や学生への協力など、伝える相手や方法も広がっています。
知ることから、漆との新しい関係をつくる。
私たちの役割は「つなぐ」こと
漆を取り巻く課題の多くは、一人、一つの地域、一つの組織だけで解決できるものではありません。
一方、それぞれが持つ知識、技術、資源、思いが結びつくことで、新しい可能性が生まれます。
地域と、漆を育てる専門家をつなぐ。
企業と、漆文化を支える職人や産地をつなぐ。
大学や研究者の研究を、社会で使われるものへつなぐ。
漆を受け継いできた人たちと、次の世代をつなぐ。
ウルシネクストは、すべてを自分たちだけで行う団体ではありません。
異なる人や組織を結び、それぞれの力を活かしながら、新しい取り組みを生み出していく。
それが、私たちの大切な役割です。
活動から生まれた代表的なプロジェクト
飯舘村
耕作放棄地から、漆の未来を育てる
福島県飯舘村では、東日本大震災と原発事故後の耕作放棄地を活用し、2019年からウルシ栽培に取り組んでいます。
植樹後も草刈り、施肥、補植などを継続し、専門家の協力を得ながら育成。成長したウルシから漆を採取し、その品質や安全性を確認する段階まで活動が進んでいます。
ウルシを植えることから始まり、地域とともに新しい可能性を育てる長期プロジェクトです。
ロクシタンジャポンとの協業
企業の力を、漆文化の未来へ
世界各地で事業を展開するロクシタングループの日本法人、ロクシタンジャポンとの協業は、ウルシネクストの活動の中でも長期にわたり発展してきたプロジェクトの一つです。
2022年、ロクシタンのサステナビリティ活動「We Act投票」への参加をきっかけに始まった関係は、漆文化を支えるさまざまな活動へと広がりました。
漆芸に欠かせない研磨材料「駿河炭」をつくる職人への支援、国産漆の生産基盤強化を目指す優良ウルシの育成プロジェクトへの支援など、企業から寄せられた力を漆文化の現場へつないできました。
さらに、輪島塗の老舗・輪島屋善仁との日本限定コラボレーションでは、ウルシネクストが両者をつなぎ、約2年にわたって商品開発などをコーディネート。漆文化の発信とともに、能登・輪島の復興支援にもつながる取り組みとなりました。
その後も協業は続き、ロクシタンからの支援を東京藝術大学美術学部工芸科漆芸研究室へつなぎ、次世代を担う学生たちが使用する漆芸材料や伝統的な蒔絵筆などの提供へと発展しています。
企業の思いと、職人、産地、教育、次の世代をつなぐ。
ロクシタンジャポンとの協業は、ウルシネクストが掲げる「漆と社会をつなぐ」を形にした代表的なプロジェクトです。
乾漆カード
研究を、社会で使われるものへ
宮城大学との取り組みから生まれた「乾漆カード」は、漆と天然素材を組み合わせ、新しい用途を探る研究から始まりました。
試作と研究を重ね、製造方法の特許を取得。さらに研究成果は、実際に認定証として使用されるまでになりました。
大学で生まれた研究を、社会で使われるものへ。
伝統素材である漆に新しい役割を生み出したプロジェクトです。
現在の活動
植樹や育成、地域とのプロジェクト、研究・開発、文化・技術への支援、企業との協働、教育・普及活動など、ウルシネクストの活動は現在も続いています。
公益財団法人お金をまわそう基金の助成先団体です
日本の歴史、文化、芸術、技術を支えてきた漆を後世に繋げていくための漆の森づくり、地域振興を目指す事業の公益性やその意義に共感いただき、助成いただいております。
お寄せいただいた助成金は、相模漆の復活で国産漆を増やす植栽事業に活用させていただきます。
皆様からのご寄付、ご支援をよろしくお願いします!
