漆の技術・文化・歴史を未来に残すために

漆は縄文時代以降、日本人は漆を植え、育て、掻き、そして様々なものに活用してきました。ウルシネクストは、これらから未来に向けて新しい漆との関係を築いていくためには、これまでの日本人と漆との関係の歴史やそれを支えてきた道具や技術、資料といったものを保存し、人材を育成して次の世に日本の漆をしっかりと継承していきたいと考えています。

漆掻きの貴重な情報を公開しています

青森県の新郷村教育委員会で教育長を務められた橋本芳弘氏は教職に就かれている頃から、夏休みなどを利用して全国の漆の産地を訪ね歩き、ライフワークとして漆に関わる歴史や文化を研究されてこられました。

橋本氏が収集されてきた漆に関わる情報は文化的にも歴史的にも貴重な資料でもあります。漆の技術、文化、歴史を残したいというウルシネクストの思いに共感いただき、ご寄稿いただいております。

漆掻きさんの人数(6)南部漆生産地域の人数

南部漆生産地域の人数 「南部漆生産の特相に就て」(小泉幸之助著 昭和14年1月)と題する小論があります。その内容は、越前漆掻工である福田源三郎氏(60歳)が話す内容を中核とするものであり、福田氏は17歳の青年時代から今日...

漆掻きさんの人数(5)大正期の国の調査による人数

大正期の国の調査による人数 大正12年に『漆樹及漆液ニ關スル調査』(農商務省山林局)が発行され、その中に「漆液掻取人夫(明治四十年大正六年)現在數比較」と題する表があります。大正6年分だけを見てみましょう。 稼人数の多い...

漆掻きさんの人数(4)福井県の漆掻きさんの出稼人数

福井県の漆掻きさんの出稼人数 断片的資料しかないのですが、福井県の出稼ぎ人数を見ていきます。 『福井県史 通史編4近世二』には以下の3点があります。 「天保三年には、鯖江藩領東庄境組と庄田組の内三二か村から四八〇人が漆掻...

漆掻きさんの人数(3)青森県の漆掻きさんの人数

青森県の漆掻きさんの人数 『明治40年青森県統計書』の中に漆掻きの状況を見ていきます。 工業の中に「漆液」があり、次のようになっています。 正味・瀨濕・雑液の合計生産量 左の郡別生産量 製造戸数 左の郡別戸数 9,848...

漆掻きさんの人数(2)明治期の国の調査による人数

明治期の国の調査による人数 明治41年には、国内各地方の報告をまとめた『地方ニ於ケル漆樹及漆液ニ關スル状況』(農商務省山林局)が発行され、各地の掻取人数を知ることができます。掻取人数は漆掻きさんの人数であり、全国では3...

漆掻きさんの人数(1)

ここで、漆掻きさんの人数を見ていきます。名称は漆搔工、漆掻職人、たんに漆かきと記載されたりします。調査関係では漆掻人夫や漆掻職などと記述されることもあります。 漆掻きさんの人数 漆生産を支えた明治期農民 <近代の日本1>...

越前漆掻きさんの大活躍 <近代の日本2>

越前漆掻きさんの大活躍 <近代の日本2> 近代の漆生産に関わり、忘れてならないことは越前人の活動です。 藩政時代は、自藩の需要のため漆液は統制されていましたが、明治となり廃藩置県により各地の漆樹が開放されました。江戸時代...

漆生産を支えた明治期農民 <近代の日本1>

漆生産を支えた明治期農民 <近代の日本1> 明治維新となりました。侍の世から近代国家への夜明けです。国内全てが大混乱の時期です。『現代日本漆工総覧』には、次の記述があります。 また徳川時代幕府及び各藩の保護政策のもとに育...

漆産地の広がりと固定化 <近世の日本2>

漆産地の広がりと固定化  <近世の日本2> 古代や中世の項でも見た『増訂工芸志料』で、江戸時代の栽培や生産を探すと、以下のものがありました。 ○貞享年間、此の際漆を産する諸国は漆を以って貢物と為し、或いは漆永と称し永銭〔...

藩財源確保につながる漆樹栽培 <近世の日本1>

藩財源確保につながる漆樹栽培 <近世の日本1> 江戸時代になり政情が安定すると、各藩は自藩の特産物の育成、財源確保、財政の再建などに目を向けるようになります。再度、『現代日本漆工総覧』の記述を見てみます。 領主の産業開発...

擾乱期でも続いた漆生産 <中世の日本>

擾乱期でも続いた漆生産 <中世の日本> 中世期の漆工品の優品は思い浮かぶのですが、栽培や生産については自分の蓄えがなく、探してみました。『現代日本漆工総覧』の中に次の一文を見つけました。 平安末期からの戦乱、南北朝時代か...

植樹も漆液も税であった <古代の日本>

文字として記録のある時代へ行きましょう。 植樹も漆液も税であった <古代の日本> 『増訂工芸志料』の「巻七 漆工」に次の記述があります。 ○大宝元年一千三百六十一年(701)文武天皇令を制し、漆部司の職制を定め、正一人、...

日本のウルシの木 樹液の利用

漆液の利用はハチが知っていた 自分が住むところは、前には水田があり裏側は山林に囲まれています。夏の時期には、自宅の軒や雨樋の裏に毎年5・6個のハチの巣を発見し、対処に苦労します。 ハチの巣を見ていた若いころ、「あっ、漆だ...

日本のウルシの木 原産地・栽培か自生か

ここで漆掻きそのものから離れて、日本でのウルシの木の栽培や漆液の利用、権力者とのかかわりなどについて、文献の記述をもとにしながら自分なりに概観してみたいと思います。お付き合いください。 原産地は日本ではないのか? 今から...

漆掻きさんの創意と工夫(6)

漆掻きさんの創意と工夫 6 事故への対処 漆掻きという仕事はウルシの木という自然が相手です。すると、人間の力ではどうすることもできない場面に出会うことになります。毛虫が大発生して葉を食べ尽されてしまうと漆液は滲出しなくな...

漆掻きさんの創意と工夫(5)

漆掻きさんの創意と工夫 5 傷のつけ方の工夫(2) 辺の傾き ウルシの木に向かって立ち、カキガマを持つ腕を伸ばして奥にカマグチを入れ、そのまま手前に引いて傷をつけます(辺を立てます)。辺の始まりを辺がしらと呼び、手前のカ...

漆掻きさんの創意と工夫(4)

漆掻きさんの創意と工夫 4 傷のつけ方の工夫(1) カキガマのカマグチ部分を用いて樹皮をむき取り傷をつける作業のことです。傷のことを、「辺を切る」「目を立てる・目をのばす」などと用いることから辺や目と呼ぶ場合があります。...

漆掻きさんの創意と工夫(3)

漆掻きさんの創意と工夫 3 二重皮ごしらえの工夫 一般にカワムキで外樹皮を削って平滑にした後で、カキカンナで傷をつけるのですが、その間にもうひと手間を加えた作業を行う地域があります。その地域で工夫されたものです。 ウルシ...

漆掻きさんの創意と工夫(2)

漆掻きさんの創意と工夫 2 足場の掛け方 田子町でのはしご木 ウルシの木の樹幹に向かい、一般に片側に5本の目立の傷をつけ、その後5しびをつくることは、普通身長の人が地面に立ち手の届く範囲であることから導き出された数である...

漆掻きさんの創意と工夫(1)

漆掻きさんの創意と工夫 1 漆掻きさんの仕事に同行して話をうかがうと、長年の経験に基づく作業等の工夫を拝見し、心に残るものがあります。そのいくつかを紹介します。 「立(た)て」のつくり方 漆掻きさんは、その日に採取するウ...

公益財団法人お金をまわそう基金の助成先団体です

ウルシネクストは内閣府認定の「公益財団法人お金をまわそう基金」の助成先団体です。

日本の歴史、文化、芸術、技術を支えてきた漆を後世に繋げていくための漆の森づくり、地域振興を目指す事業の公益性やその意義に共感いただき、助成いただいております。

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