福を招く、お正月のテーブル

文と写真:中根 多香子

お正月は日本人にとって、最も大切な年中行事。
新年に豊かな実りと幸せを授けてくれる「歳神様」をお迎えする準備を、少しずつ始めます。
思い出すのは子ども時代、元旦はいつもより小綺麗に身支度をし、両親はきものを纏い、輪島塗のお重に詰めたおせちを囲んで新年を寿ぐ、家族団らんの光景です。

さて、最近は「お正月の食卓を素敵にしたいけど、どうしたらいい?」というお声をいただく事が増えました。
そこで、簡単にお正月らしさを演出する、私流の決めごとを綴ってみたいと思います。

まず一つ目は、紅白・金銀に代表されるお正月カラーでまとめること。
お祝いごとにはめでたい紅白、金も「富」を招く定番色ですね。
私はリネン類に清らかな白を選び、少しだけ赤と金を効かせるのが好みです。
これらの色を意識するだけで、ぐっとお正月らしいテーブルになります。

二つ目は、植物と小物をあしらうこと。
縁起の良い松や南天など小さな植物を添えるだけで、テーブルがいきいきと華やぎます。
また、干支や吉祥文様の小物があると、お正月ムードも高まります。
「祝い箸」は、忘れずに用意したい小物のひとつ。
箸の両端が細く「両口箸」とも呼ばれ、片方は人が食べるために、もう片方は神様が食べるために使って、共に食事することを意味している特別なお箸です。

三つ目は、和の素材を取り入れること。
和紙のランチョンマットや箸袋、水引などはしっくりきます。
そして、お正月といえばやはり漆の出番。
暮れにお重や屠蘇器などを準備して、元旦に”漆オールスター”が並ぶ景色はまさに天晴れ、と思うのです。
最高のハレの日に、堅牢優美な輪島塗で歳神様をおもてなしする慶び。
家族でテーブルを囲み、新しい年の幸せと健康を祈る時、幼い頃の情景が蘇ります。

伝統ってこうして次の世代へ繋がっていくのだと、あらためて感じ入るお正月です。

執筆者プロフィール

中根多香子
中根多香子
漆芸プロデューサー / 箸文化大使

JAL国際線CA・要人接遇を経て、YUI JAPAN設立。「うるしのある麗しいくらし」をテーマに、心豊かなライフスタイルを提唱。美しい伝統を大切に、輪島塗、和の作法など日本の美意識を国内外へ伝え続けている。ウルシネクストパートナーとしてSDGsにも注力、漆を通じて平和で持続可能な社会を目指している。

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https://yuijapan.jp

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